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【セミナーレポート】京都大学の研究者が語る子育て研究の最前線!健康的な心身の基盤をつくる「腸活起点の食育」の重要性②

【セミナーレポート】京都大学の研究者が語る子育て研究の最前線!健康的な心身の基盤をつくる「腸活起点の食育」の重要性②

INDEX

サイキンソーは7月1日、「京都大学の研究者が語る子育て研究の最前線!健康的な心身の基盤をつくる『腸活起点の食育』の重要性」を開催しました。

本記事では、大阪大学大学院医学系研究科 先進融合医学共同研究講座 日本学術振興会PD特別研究員として活躍される松永倫子先生の講演内容をダイジェストとしてお届けします。

本セミナーの前半で講演いただいた明和先生の「脳科学×教育×食」についてのレポートは以下からご覧になれます。

登壇者プロフィール

明和 政子
大阪大学大学院医学系研究科 PD研究員
松永 倫子(まつなが みちこ)先生
京都大学大学院教育学研究科 博士(教育学)、特定助教を経て、現在 大阪大学大学院医学系研究科 先進融合医学共同研究講座(日本学術振興会PD特別研究員)に所属。発達科学や神経科学の観点から、子育て中の養育者のメンタルヘルスに関わる要因を検討したり、こどもの心と体のレジリエンスが、養育者との関わりの中でどのように発達していくのかについて研究に取り組む。

親子の脳・心の育ちを支える腸内細菌叢と食生活習慣

松永先生は、「親子の脳・心の育ちを支える腸内細菌叢と食生活習慣」と題して、「子どもの脳・心の発達と腸内細菌叢」「子育ての中の親のメンタルヘルスと腸内細菌叢」「親子セットで脳・心・身体を守るには?」の3つの話題を中心に、明和研究室および世界の研究成果を交えて講演されました。

子どもの感情制御と食習慣に関連性

明和研究室は、「腸内細菌叢-腸-脳」軸の観点から親子の心身の健康を支援する方法を探るために、サイキンソーをはじめとする企業と共同し、全国2500組以上の親子を2~3年かけて調査しました。日本全国の保育園や幼稚園、こども園の先生方にもご協力いただき、便のサンプルや質問書、自律神経機能、身体運動機能、内分泌ホルモン計測によってデータを収集・分析し、データベースを構築した、初めての活動だと認識しております。

腸内細菌叢は様々な外部要因に影響を受けますが、とりわけ授乳形態や母親の食習慣、きょうだい・家族の生活習慣など、生まれ落ちた環境に大きな影響を受けます。したがって、養育者の心身や食生活習慣もセットで守る必要があると考えました。

研究結果を中心に、まずは子どもの脳・心の発達と腸内細菌叢についてお話します。

人間の日々の活動を支える重要な認知機能である「実行機能」は、「感情制御」と「認知制御」から成り立っています。とりわけ「感情制御」は、個人の生涯にわたる心身の健康を予測する重要な因子です。

調査の結果、この「感情制御」が腸内細菌叢と強い関連をもつことが分かっています。

具体的には、感情制御に困難を抱える子どものグループは対照群の子どもと比較して、炎症に関連する腸内細菌の割合が高く、腸内環境が乱れている可能性があります。また、感情制御に困難を抱える子どものグループは、一週間あたりの緑黄色野菜の摂取頻度が低いこと、偏食の割合が高いことも判明しました。

食習慣は幼児期の感情制御の発達リスクと関連しているようです。

育児ストレスの高い母親の心身状態と腸内細菌叢にも関連性

次に、300人ほどの母親を対象に解析を行ってみたところ、約24%の母親が「育児ストレスやうつ症状が特に高い」という解析結果が示されました。「身体疾患・精神疾患による通院や服薬がない母親」を対象としたにも関わらず、このような結果が出たのです。

このグループは、睡眠の質が低く、消化機能や血液循環、身体的抑うつ症状、女性ホルモン機能の低下など、身体症状も悪化していました。心身ともに脆弱な状態におかれた日本の母親たちの、メンタルヘルスリスクの大きさを示す結果でした。

育児ストレスの高い母親のグループと低い母親のグループの腸内細菌叢を比較すると、次のような傾向が見られました。 ・腸内環境を守る「短鎖脂肪酸」の産生に関する菌が少ない。 ・炎症に関連する菌が多い。 ・腸内細菌叢の多様性を示す種類の豊富さや均等度が低い。

母親のうつ症状と腸内細菌叢にも関連性があることが分かりました。

回復する力「レジリエンス」を高めよう

親子の心と身体の疾患リスクを予防・緩和する上で、ストレスをひき起こす要因やメカニズムに目が向きがちです。しかし、それだけでなく、レジリエンス(=回復する力)に着目すべきです。

レジリエンスとは、困難な状況に適応していく能力やプロセスのことです。心身疾患の予防やQOL向上の観点からも着目されています。

様々な研究によって、食習慣がレジリエンスを育むことが分かっています。成人36人を対象に10週間の食事介入を実施した欧米における研究では、「食物繊維を多く摂る食事介入」と「発酵食品を多く摂る食事介入」とを比べると後者のほうが腸内細菌叢の多様性が上がり、血中の炎症マーカーが減少したという結果が出ました。

日本の伝統的な食文化には、発酵食品が豊富です。心身のレジリエンスを高める上で有効な食文化である可能性が見えてきました。

また、食事は栄養源であるのみならず、身体機能や五感を使ったコミュニケーションの場でもあります。身体の内側の変化と、身体の外側の情報をむすびつけて学ぶことで、健康な身体・脳・心が育まれるのです。

北欧では、子どもの周辺環境に着目したある研究が行われました。大都市の保育園の園庭を緑化した大がかりな介入研究です。介入前の都市型保育園、介入保育園、自然志向型保育園を比較したところ、次のような結果が示されました。

・介入保育園の園庭の土壌の菌叢の多様性が増加。 ・介入保育園の園児の皮膚の菌叢の多様性及び腸内の酪酸産生に関連する菌の多様性が増加。 ・介入保育園の園児の血中の炎症マーカーが減少し、免疫抑制は上昇。

2020年に発表されたこの最先端の研究から、自然と触れ合う環境が子どもの心身のレジリエンスを育むという可能性が見えてきました。

腸-脳の健康を育むヒントは、食生活習慣や生活環境といった日常に眠っています。そして、最先端の研究を通して科学的な説明が与えられるようになりました。

また、心に関する問題をめぐっては、かつて脳と心にだけ目が向けられてきましたが、一連の研究から、心と体を切り離さずに支援することの重要性が分かってきました。

レジリエンスを高めて私たちの心と体の健康や幸福を守り、病気を予防できるよう、国全体で考えていくことが重要だと思います。

まとめ

本セミナーの後半では、松永先生より、こどもの心身の発達のためには、親子を合わせて、心身や食生活のケアを行う重要性について講演いただきました。特に、母児を対象とした腸内細菌叢データベース構築の研究結果をもとに、腸内環境の良し悪しと関連する、こども期の感情コントロールの差や、育児中の母親が抱えるレジリエンスの問題から、食習慣を改善する必要性についてお話しいただきました。

就学前は腸内細菌叢の安定と感情制御のカギとなる前頭前野の「感受性期」
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イベント後、明和政子先生(左)と松永倫子先生(右)